きずなカフェ保育の根っこ

今回の保育ドキュメンテーションでは、一人あそびの大切さとそこから広がる世界についてご紹介させて頂きたいと思います。

保育所保育指針(以下指針)で保育の方法において、
【子どもが自発的、意欲的に関われるような環境を構成し、子どもの主体的な活動や子どもの相互の関わりを大切にすること。特に、乳幼児期にふさわしい体験が得られるように、生活や遊びを通して総合的に保育すること。(一部抜粋)】
と記載されています。

子どもにとっての遊びは、遊ぶこと自体が目的です。夢中になって遊ぶ中で味わう満足感や達成感、時には疑問や葛藤は子どもの成長を促し、更に自発的に身の回りの環境に関わろうとする意欲や態度を育てるとされています。

ここで、1歳児の遊びの段階は、他との相互交流は持たず個々で遊びを楽しむ「ひとり遊び」の段階とされています。
さっそく、一人あそびについてお話させていただきます。


1.そもそも一人あそびができるということは
 赤ちゃんの頃は子どもは親から離れることが不安で不安で仕方ありません。しかし、日々身近な大人に守られ、愛され、信頼されているとことを感じる中で子どもの情緒は安定し、人への信頼感が育っていきます。信頼できる大人に見守られる中で子どもは次第に親以外の対象へと興味や関心を向けることができるのです。つまり、一人あそびができるということは、自分は受け止められているんだという絶対的な安心感の基で行われています。


2.探索あそび
 1歳を過ぎた頃になると歩行が安定し始め、子どもの行動範囲は一気に広がり、身近な人や身の回りの物に自発的に働きかけていきます。気になるものに積極的に触れて関わり、そのものの素材や形、形質を知っていく探索あそびが盛んになります。この時期に“自分以外のもの”を知るさまざまな経験が得られるよう空間や玩具の環境を整え、ひとりでじっくり遊ぶ中で内面的世界を豊かに広げていくことが大切です。 


2.傍観
 1歳児の姿の一つに、周囲の大人や子どもの姿をまじまじと見つめる姿があります。初めて見るものや事柄に対し、どんなものなのか情報を集めているのです。まずは見て知ることで安心できるのです。そこから次第に自分以外の人(特に大人)との遊びや大人の模倣あそびに発展していきます。保育場面では、傍観する子どもの姿を受け止めながら、保育士や友達の姿を見て活動の楽しさを感じ、無理なく参加できるようにしています。傍観も一種の一人あそびです。自分だけで楽しむ世界から周囲の人の姿に少しずつ関心が向けられるようになり、次の段階の「平行あそび」へと繋がります。


3.一人あそびから平行あそびへ
 一人あそびを十分に経験し、2歳を過ぎた頃になると、自分以外の人や物への興味がさらに深まり、傍にいる友達や友達の持つおもちゃが気になり始めます。そこで自分も見様見真似で同じことをしてみるのです。一見、友だちと一緒になって遊びを楽しんでいるように見えますが、実際には、同じ場所で同じような遊びをそれぞれが楽しんでいるという「平行あそび」の状態です。相互交流は多くは見られず、ただ一緒に何かをすることやその雰囲気が面白くてたまらないのです。



以上、一人あそびから平行あそびまでの過程についてお話させていただきました。
今回の1歳児ドキュメンテーションを通して、子どもが遊びに夢中になるということは、自分を受け止めてくれる安心できる環境の基で行われているということ、また、遊びの発達段階において一人あそびの十分な経験が後の自分だけの世界以外への興味・関心や子ども同士の関わりに繋がるということを知っていただく機会になればと思います。

子どもたちが安心して生き生きと過ごせるよう、子どもたちの姿に合った遊び環境を整え、これからも保護者の皆さまと一緒に成長を見守らせていただきたいと思います。


【参考文献】
厚生労働省(2008)『保育所保育指針』
厚生労働省(2008)『保育所保育指針解説書』
無藤隆,萌文書林(2007)『事例で学ぶ保育内容<領域>人間関係』
吉本和子,エイデル研究所(2002)『乳児保育一人ひとりが大切に育てられるために』
飯塚恭一郎(2012)「幼児のひとり遊びに関する一考察 ―生成(Werden)としての遊びの概念を拠り所にして―」筑紫女学園大学『筑紫女学園大学短期大学部紀要』7,pp.267-274

(文責:保育スタッフ 片山志織)


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