きずなカフェ保育の根っこ

保育園生活ならではの集団生活の中で、日々子どもたちはいろんなことを経験し学んでいきます。その中で今回のドキュメンテーションでは日常の4歳児の子どもたちにスポットを置き、仲間関係がどのように育っていくのかについてお話させて頂きます。

保育所保育指針には、4歳とは「仲間とのつながりが強くなる中で、けんかも増えてくる。その一方で、決まりの大切さに気付き、守ろうとするようになる。感情が豊かになり、身近な人の気持ちを察し、少しずつ自分の気持ちを抑えられたり、我慢ができるようになってくる。」とあります。

4歳児とは「自分が」という考えが強くなってきますが、一体その自我とはいつ頃から現れるようになったのでしょうか?

自我は1歳頃から芽生えていき深まってきます。自我とは自分がしっかりとしてくることや、自己主張が育ってくるという面もありますが、決して自分の中だけで育つものではありません。
そもそも「自分」とは他者と異なる自分自身を意識することから始まってくるのです。
そのため、自我が育つということは他者との関係が育っていくということでもあります。



そこでは基本的には3つの関係が必要になります。
一つ目は、自分と同じあそびで楽しさを共有でき、ときにはぶつかり合える「対等の関係」です。
これは同年齢のお友達の中で育っていく関係で、遊ぶものや共有するものが似ているからこそ一緒に世界に入って楽しむ姿が見られたり、時には、お互いの思いがぶつかり合いトラブルに繋がっていきます。




例えば、一緒におままごとをしている際に始めは仲良く
遊んでいる光景が見られていても、一緒にごっこの
世界に入って楽しんでいる分、自分が思っていた
あそび方ではなく、言い合いになったりすることも
あります。しかし、このトラブルは決して悪いことではなく、
お互いの思いを伝えれる場となったり相手の気持ちを知り、
考えることが出来ることに繋がっていきます。


(4歳児がお手本を示しているところ)



二つ目は、お兄ちゃんやお姉ちゃんに対して憧れの気持ちを持ち、真似てみたりする関係です。保育園の中でも異年齢児との関わりが多く、小さい子はお兄ちゃんやお姉ちゃんがしていることをしっかりと見ており、それを真似る姿が見られます。


(4歳児の姿を見て、3歳児が真似ているところ)



三つ目は、自分自身がお兄ちゃんお姉ちゃんになって他児に世話をし自分の力を確かめたいと思う関係です。お兄ちゃんやお姉ちゃんにしてもらったことを今度は自分が小さいお友達に同じようにしてあげる姿もより多く見られます。




仲間関係を築いていくためにあたってこの3つの関係が大切となってきます。
年齢によって違いがありますが、一方的にお世話をするだけでは相手が嫌がってしまったり迷惑がったりしてしまうこともよくあります。
しかし4歳児ぐらいになると「お世話をする」ということも一方的なやり方ではなく、相手がすることをちょっと待ってあげたり、教えようとしたりといった関わりに繋がっていきます。
 そこで保育園の中では異年齢児との関わりを持つことでそのような関係作りを築いていけるようにしています。

例えば、当園では毎朝集会を行っているのですが、あか組(1歳児)、もも組(2歳児)の子どもたちが外へ出てくる際に、なかなかうまく靴が履けない際に近くに行って4歳児の子どもたちが片方の靴を履かせてあげ、「こうやってするねんで」と教えてあげる姿が見られます。




これはすべてをしてあげるのではなく、履き方を教えてあげるうちに1歳児や2歳児の子どもたちが「自分たちでしてみよう」という気持ちを育てていることに繋がります。
時には嫌がってしまう子どもには「お兄ちゃんが見といてあげるわ」などとすべてにおいてお手伝いをするのではなく、見守ってあげる姿も見られます。

このような関わりから仲間関係の育ちにも繋がっていくのです。




また、4歳児の姿として「○○だけれども△△する」という姿が見られてきます。しかしそのような力を育てていく過程に中でも、自分がやりたいことを優先してしまうこともあります。例えば、着替えをしてから遊ぼうねと伝えると、早く遊びたいという思いから脱いだ衣服を片付ける際に適当にかばんの中に片付けてしまったり、ロッカーに突っ込んでしまうことがあります。その中で「早く遊びたいけれどきちんと脱いだ服は片付けをする」などが出来るように丁寧にその都度子どもたちに伝えたり、一緒にしてみたりすることで、出来たという達成感に繋がっていきます。




4歳児は自分の気持ちや相手の気持ちが分かり始めると共に、自分の思いを通そうとする思いと、時には思い通りにならないという不満や辛さの間で葛藤する時期となっています。
その為、自分の気持ちがコントロール出来ずに泣いたり怒ったり、時には手が出てしまったりすることもありますが、まずは自分と向き合う時間を作ってあげることが必要となります。
またそのように感情を吐き出すことによりある程度、自分の気持ちを立て直して「○○だけども△△する」という気持ちに繋がっていくのです。




 今回のドキュメンテーションを通してお伝えさせて頂いたように、保育園ならではの異年齢児の関わりや、同年齢のお友達との関わりの中で子どもたちは多くのことを学んでいます。トラブルがあるからいけないということは全くなく、むしろ子どもたちはトラブルの中から学んでいくことも多いのです。
今後もトラブルがあった際に、子どもたち同士の話し合いの場を大切にしていき、すべてに大人が関与するわけでなく見守る時間を作ったり、時には間に入って一緒に解決していけるような関係づくりを目指していきたいと思います。

参考書:子どもと保育【改訂版】4歳児
(文責:保育スタッフ 西出 知奈美)


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