食のお悩み相談室

保護者の皆さんから日頃よくお寄せいただく
子どもの食のお悩みについて
代表的なものをQ&A形式でご紹介しています。

食べる

  • ミルクは子どもにとって最初に経験する食べ物であり、安心感や満足感につながります。そのため、慣れ親しんだ味や食感を求める場合、離乳食ではなくミルクを求める場合があります。
    ミルクを欲しがる様子が多くみられるのであれば、最初はミルク粥などのミルクに近いものから少しずつ食事に慣れることができるようにするのも一つの方法です。ミルクに近いものを哺乳瓶ではなく、スプーンから食べるという経験を少しづつ増やしてあげましょう。
    また、ミルクの量も徐々に減らしていくことで、ミルク以外の食べ物でも安心感や満足感が得られるようになります。無理強いしてしまうと、子どもはストレスに感じてしまうため、焦らず徐々に切り替えられるようにしてあげましょう。



  • 味覚の発達とともに、味にも敏感になり好みが出てきます。また、自分の意思も発達するため、見た目で嫌だと感じるとなかなか口を開けてくれなくなったりします。
    そんな場合は、その食材がどんなものなのか興味を持つことができるように、ご家庭で一緒に絵本を見たりするとよいでしょう。ミニトマトなど、自宅で手軽に栽培できる野菜であれば、一緒に育ててみるのも良い方法です。自分が大切に育てたものは、おいしく感じるものです。

    普通食を食べるようになると、子どもたちは周りの影響も受けやすくなります。「お友だちが食べているから自分も食べてみよう」と思えたり、家族が食べているのを見て興味を持ったり、食べた時にたくさん褒めてもらえると、その嬉しさから「もう一回食べてみよう」と思えたりします。
    完食を目指すのではなく、まずは少しの量からチャレンジし、褒めてもらうことで、子どもたちは「自分にも食べられるんだ」とどんどん自信をつけ、食べることに抵抗が無くなっていきます。

    野菜が好きになる絵本のご紹介


    「やさいだいすき」作:柳原 良平


    「やさいもぐもぐ」作・絵:ふくざわ ゆみこ


  • 大人でも同じように、子どももはじめて目にする食べ物には「どんな味がするんだろう…」「これは何だろう…」と警戒してしまいがちです。
    まずは、家族が食べる姿を見せて、そのおいしさを伝えてあげましょう。大好きな家族がおいしそうに食べていると、「どんな味がするのかな」「食べてみようかな」「おいしそうだな」という思いが芽生えます。そして食べてみるとそのおいしさに気づき、大好きな食べ物になったりすることもあります。最初の一口のために、警戒心を弱める工夫をしてあげてください。


  • 無理に食べさせようとするのではなく、食べるための雰囲気づくりも一つの方法です。
    わたしたちの園では、子どもたちの好きな歌を歌ってみたり、スプーンを電車に見立て「お口の駅に到着しますよ~」と言って口に運んでみたり、パペットなどを使いながらごっこ遊びのようにしてみたり…など、楽しい雰囲気の中で食べ進めていけるよう工夫しています。「食べなさい」と無理強いしても、ますます嫌いになってしまうかもしれません。それよりもまずは楽しい雰囲気を演出してあげましょう。
    また、これを食べるとどんな良いことがあるかを教えてあげるという方法もあります。これを食べると強くなれるとか、丈夫になれるとか、早くお姉さんになれるなど、子どものなりたい気持ちに寄り添う視点で、食事を進めてみます。そして、「これだけ食べてみよう」と目で見て分かるゴールを設けてあげて、食べる気が起こるようにしてあげましょう。
    さらに、食べ物に対していろいろな興味を抱かせてあげるという方法もあります。
    絵本「おいしい おと」は、食べ物によって食べる音が違うんだという視点から、食べ物への興味が持てるようになるのでオススメです。


    「おいしい おと」作・絵:三宮麻由子


  • 園ではお友だちが一緒に食べているため、その影響を受けることが大きいです。お友だちが先生に褒められているのを見ると、自分も褒めてもらいたいと頑張ってみたり、おいしそうに食べている姿に影響を受けたりと刺激も多いのです。


健康

  • 飲みたがらない理由として考えられるのは、お水やお茶の味が苦手だったり、トイレに行くのが嫌だったり、そもそも喉の渇きを感じておらず必要に思ってなかったり、「飲みなさい!」と押し付けられるのが嫌だったりと様々です。
    そんな時の対応策として以下のようなものが有効です。

    • 少量だけ入れてみる
    • コップを小さくする
    • お気に入りのコップや大人用のコップにして雰囲気を変えてみる
    • ストローで飲ませてみる
    • おやつをフルーツにしたり、汁のもや煮物などで食事の水分量を多くしてみる
    • トイレを楽しい所と認識できるようにして、トイレに行くのが嫌にならないようにする
    • しっかりと汗をかかせる

    いろいろやっても飲んでくれない時は、その子が水分を必要としていないのかもしれません。尿の色や排便、体調や皮膚のもどりなどに注意しながら、その子が欲しいと思うタイミングを待ってみるのも1つの方法です。

    子どもが水分をとってくれないからと言って「せめてジュースでも」という気持ちになるのは分かるのですが、ジュースによる水分補給は、虫歯の大きな原因になるだけでなく、小児糖尿病などこどもの身体に悪影響を与えるリスクが高まるため、できるだけ避けてください。たまに飲む程度なら問題ありませんが、頻繁にお茶やお水の代わりに与えてしまうと、ジュースしか飲まなくなるためとても危険です。


  • 歯の生える時期や順番には個人差があるので、1歳半くらいまでなら心配はありません。1歳半を超えても1本も生えてこないのであれば、乳歯萌出遅延(にゅうしほうしゅつちえん)や癒合歯(ゆごうし)、先天性欠如などの可能性もあるため、一度専門機関に相談されることをおすすめします。

    また、2歳半から3歳半頃までに乳歯が生え揃っていれば、十分に歯の発育がなされていると言えるため、多少の順番や時期の違いを心配する必要はありません。

    歯の生える順番の目安

    • 生後6か月~9か月頃…下の前歯から生えてくる
    • 生後9か月~10か月頃…上の前歯が生えてくる
    • 生後11か月~1歳頃…上下の歯が4本ほど生えそろう
    • 1歳2か月~1歳半頃…奥歯(第一乳臼歯)が生えてくる
    • 1歳9か月~2歳頃…犬歯が生えてくる
    • 2歳半~3歳頃…奥歯(第二乳臼歯)が生えてくる

  • 噛むための筋肉や舌の筋肉をうまく使えておらず、前歯でかみちぎった物を舌で奥に送ってかみ砕き、それをさらに奥歯ですりつぶしてから、舌で喉に送りこむという一連の動作が連動できていないことが考えられます。
    他にも、一口で食べられる量を脳が認識できておらず、口に入れすぎたりして噛めなくなっている子どもも多くみられます。
    このような場合の対策として以下のようなものが有効です。

    • 手づかみ食べで前歯でかみちぎることを意識させ、一口量を脳にインプットする
    • はじめから硬いものを与えるのではなく、まずは噛める物から回数をかけて噛むことを教える
    • 食べ物の流し込みにつながるため、食事中の水分摂取は避け、食前と食後にのみ摂取させるようにする
    • スプーンを使う場合でも、なるべく自分で食べ物を口に運ばせ、唇を閉じて食べ物を捕食する事を覚えさせる
    • 舌や噛むための筋肉を鍛えることを意識した遊びやトレーニングをする
    • 食べる時の姿勢を保持するために、ハイハイやトンネルくぐり、バランスボールなどで体幹を鍛え、正しい姿勢を作れるようにする

栄養

  • 子どもは、成長に伴い味覚が発達するとともに、偏食が見られたり、場合によっては見た目で嫌がったりすることもあります。
    だからと言って無理強いは禁物。何よりも大切なことは『食事の時間が楽しい時間になる』ことです。
    まずは、少量ずつ食べ進てみてください。「これだけ食べたらおしまい」と終わりを見せ目標を明確にします。そして、その目標が達成できたら、大いに褒め、子どもの自信へと繋げてあげます。

    わたしたちの園には、子どもたちが育てる農園があり、一年を通して野菜を植え・収穫し・食べるという、体験型の食育を実践しています。野菜を植えるときには、「早く大きくならないかな」と楽しみにし、毎日水やりをしながら生長を見守り、いざ収穫となると「おおきくなった」とみんなで達成感を味わいます。収穫した野菜は給食でいただき、時にはご家庭にも販売し、家族とともに食べながら収穫の喜びを分かち合えるような機会にもなっています。
    自分にとっては苦手な食べ物であっても、自分たちで育てたものへの愛着は大きく、「自分が育てたから食べるんだ」とはりきっている姿もよく見かけられます。

    このように嫌いなものを好きになれるような工夫や、機会を設けることで、偏食が無くなることも少なくないのです。

    嫌いなものが大好きになる絵本のご紹介


    「やさいさん」作:tupera tupera


    「くだものさん」作:tupera tupera


  • 子どもは身体が未発達。乳児は特に満腹中枢が発達しておらず、満腹だということを自分で理解することができません。
    「食べたい」という子どもの声を鵜呑みにして、そのままあげつづけてしまうと、嘔吐や腹痛を引き起こしてしまうこともあります。
    子どもにちょうどよい大きさのトレーに決めた量を配膳してあげ、子どもが「自分の食べるもの」という理解できるようにしてみましょう。量を決め、食べたらそこで終了。または、「果物を食べたらおしまい」という、ご家庭ならではの『ごはんのルール』を設けてあげるのも良いかもしれません。


  • 鉄分・カルシウムは、子どもの成長にとってとても大切な栄養素です。

    鉄分の役割

    • 鉄はヘモグロビンの主要成分ですので、全身に酸素を運搬する役割を果たします。
    • 酸素を運搬しながらエネルギーの代謝にも一役買っています。
    • 免疫力を高め、風や感染症にかかりにくくしてくれます。
    • 脳の情報伝達を高め、認知機能や学習能力を向上させてくれます。

    カルシウムの役割

    • 骨や歯の主要成分となり、成長期の子どもにとってはとても大切です。
    • 筋肉の収集を助け、運動機能を高めます。
    • 鉄分と同様に脳の情報伝達を高め、信号を正しく伝えます。
    • 怪我などで出血した時に、血液を固める働きをします。

    鉄分を豊富に含む食品

    • お肉
    • 豆類
    • 緑黄色野菜

    カルシウムを豊富に含む食品

    • 牛乳
    • チーズ
    • ヨーグルト
    • 大豆製品
    • 海藻類

    乳幼時期は、人の成長にとってとても重要な時期と言えます。
    苦手な食べ物がある場合は、小さくして混ぜてみるなどして、摂取しやすい工夫をしてみてあげてください。
    「ご飯」という概念に縛られず、「おやつ」にカルシウムや鉄分が取り入れられているものを選んであげるのもよい方法です。

    良いからといって、それらに偏るのではなくバランスも大切です。
    野菜や果物に多く含まれるビタミンCを含む食品を一緒に食べることで、鉄の吸収を高めることができるのでおすすめですよ。


マナー

  • ある程度の時間で区切らないとダラダラといつまでも食べ続けてしまうという思いがある一方で、一定量は食べさせないと足りないのではないかと心配になるという声もよく聞かれます。
    ある程度の量を食べさせることも大切ですが、いつまでも食べつづけても子どもは食事に集中できないため、時間を決めるようにしていきましょう。

    決まった時間になっても終わらなければ、食事を下げるなどして、子どもが時間を意識できるよう促していくことが大切です。時計の数字が分かる年齢の子どもには、「○の数字になるまでにたべようね」と約束をすることもいいかと思います。

    わたしたちの園では、子どもたちと何時になるまでに食べ終わるかを約束をしたり、まだ数字が読めない年齢の子どもたちには時計の数字の横に動物などのイラストを貼り、「この動物さんのところになるまでに食べようね」と話をしたりしています。

    また、集中して食べられるような環境づくりや、休日に家族みんなで一緒に食べるという楽しい雰囲気をつくることもマナーの観点では大切です。



  • 食事の前には、それまで遊んでいたものは一度片付け、「今からご飯の時間」という区切りをつけていくといいかと思います。また、約束事ができる年齢になってきたら、「食べてから遊ぼうね」という話をして、集中して食べることができる環境を作りましょう。
    私たちの園では、「食べてからじゃないと遊べないよ」という否定的な言い方ではなく、「食べたらいっぱい遊ぼうね」という肯定的な言葉を使うことを大切にしています。肯定的な言葉はモチベーションアップにもつながります。食べたら遊べるんだという楽しみの気持ちを持って食事に向かえるといいですね。

    「今日だけだよ」など、特例を作って途中で遊ぶことを許可してしまうと、子どもは次の日も特別なことを期待するようになります。子どもは前日の約束事は忘れてしまうものです。食事の時間と遊ぶ時間のメリハリを、大人がつけていってあげることが大切です。


  • 乳幼児期の子どもたちにとって、食事の時間は単なる栄養摂取の場であるだけではなく、社会的なマナーや道徳的な意識を学ぶための重要な機会でもあります。
    そのためにも、食卓に向かう時間を、食事を作ってくれた人へのありがとうの気持ちや、たくさんの命をいただいていることへの感謝の気持ちを教える機会としたいですね。

    そのためにも、食事の時間は、テレビやYouTubeをつけず、子どもが食事に集中できる環境をつくりましょう。テレビやYoutubeよりも、家族で一緒に食べながら、今日あったできごとや楽しかったことなどの会話を楽しめる時間にしてみませんか。
    平日はお仕事があったりと、なかなか一緒に食べることが難しいこともあるかと思いますが、たとえ一緒に食べられなくても、子どもが食べている最中は話しかけてあげながら、楽しく食事ができる環境をつくってあげられるといいですね。